MESSAGE

境界は、分かれ目じゃない。
つなぎ目だ。

愛知大学 地域政策学部 教授
三遠南信地域連携研究センター長
戸田敏行

縮減社会に
持続性をもたらす…って?

アシタシアとは「明日のくに」の意味。ささしまライブにある愛知大学名古屋キャンパスを研究拠点に、大きく言えば日本社会の明日、つまり未来をつくるための試みを重ねていこうというプロジェクトです。

今、日本は、人口減少とそれに伴う経済の縮小という課題に直面しています。これは世界中を見渡しても誰ひとり体験したことがない、大きな変化です。そう、史上初。ですから今までの経験則はほぼ通用しません。前例やお手本もありません。「このままじゃダメだ」と言うだけではダメなことは、もちろんみんなわかっています。では、どうすればいいでしょう?

「日本という縮減社会に持続性をもたらす」ためには、何かを変えていかなくてはならない。何をどう変えるか、そのヒントが、地域と地域の「境界」にあるのです。

社会が大きく変わろうとするとき、初めの変化は中央ではなく「端っこ」で起こります。中央は築いてきたしくみを維持するのがシゴトであって、それを壊すようなことはできないからです。明治維新を思い出してみてください。外国と接する「辺境」からムーブメントが起こって、最後に江戸が変わった。

その意味で、県でいえば県境を挟んだ町と町が今ある枠組みを越えてつながれば、必ず面白いことが起こるはず。地域と地域の境界に加えて、異なるシステム同士の境界、あるいは行政と民間、異なる業種、学生と社会人といった立場の境界をお互いに「越境」して、ひとつアクションを起こしてみる。大きいことでなくていい。小さいアクションが無数に起これば、そのどれかが、中央を動かす大きなうねりになるかもしれない。そう思うとワクワクしますね。
コロナ禍で様々な境が高まっていないでしょうか。むしろその境を超えることから新しい社会が始まると考えます。

「端っこ」から、
変化は起こる

私たちだから、
できること

地域と地域をつなげることは、縮減社会のなかで限られた資源を生かす意味でも重要です。愛知大学には「三遠南信地域連携研究センター」があり、三遠南信※1地域を対象とした越境地域計画や「軽トラ市」ネットワークなどアシタシアのベースになる事例を積み上げてきました。活動の第一歩はいつも、地域の人と人がつながる、出会いの場をつくること。アシタシアにおいても「サロン」で人と人をつなげ、そこで話された課題を「リビングラボ※2」で深掘りし、最終的に学問的な研究や教育にフィードバックするというフローを描いています。

もう一つ、愛知大学という文系大学が取り組むことに大きな意味も。この中部圏は技術開発に優れているけれど、技術だけが一人歩きしてもよりよい未来はつくれない。どんな技術が何のために必要かという意味づけ、価値観がなければ。AI時代を迎えた今こそ、文系と理系の共創が必要です。リベラルアーツの出番、です。

  • ※1 愛知県東三河地域、静岡県遠州地域、長野県南信州地域からなる県境を越えた地域
  • ※2 企業、行政、市民等が共同し、新しい技術やサービスを開発することによって社会課題解決を目指す試み

アシタシアはスタートを切ったばかり。愛知大学の先生方、職員のみなさん、15万人を数える卒業生のみなさん、現役の愛大生、そして将来を考えている中学生や高校生のみなさんも、地域やしくみの「境界」に目を向けることからはじめませんか?小さなアイデアから、この国の、そしてあなたのアシタシアが見えてくるかもしれません。

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